「ベルサイユのばら」で学ぶ美しい日本語 

 

10.2月 

 

ときはめぐりめぐるとも

いのち謳うものすべて

なつかしきかの人に

おわりなきわが想いをはこべ

わが想いを……はこ…べ…

あ…あ!

青い瞳その姿は……

さながら天に吼ゆるペガサスの

心ふるわす翼にもにて…

ブロンドの髪ひるがえし

ひるがえし……

 

《解説》

 

 上の言葉は、オスカルさまをかばって銃に撃たれたアンドレが、死の間際オスカルさまに歌った歌の詞です。

 「謳う」は「声をそろえて誉め称える」、「なつかしき」は「愛しい」「そばについていたい」、「かの人」は「あの人」を、それぞれ意味します。

「季節は巡り巡っても、声をそろえて命を誉め称える全ての生きとし生けるものたちよ、いつまでもそばについていてあげたい愛しいあの人に、なくなることなど永遠にない私の想いを運んでおくれ。春は満開の花たちよ、夏は淡い光を放つ蛍たちよ、秋は燃えるような紅葉たちよ、冬は雪の一片一片よ、これから先、何年経とうと、私の尽きぬ想いを愛しいあの人に伝えておくれ。私の愛しいあの人が、悲しがらずに済むように、寂しがらずに済むように…。」

心ならずも愛するオスカルさまを残して死ぬことになったアンドレの、そんな想いを込めた歌のように思えます。

 「あ…あ! 青い瞳その姿は……」以下は、「『ベルばら』で学ぶ美しい日本語」の第1回で紹介したアンドレの作った詞と同じです。アンドレは、十何年も前に作ったであろうこの詞に加筆して、自分で曲をつけ、最期の最期に愛する人に歌って聞かせたわけです。

アンドレの苦しい息の下から途切れ途切れに聞こえてきたこの歌にオスカルさまは何を思ったのでしょうか。

幸い(?)オスカルさまはアンドレの逝った翌日には、神に召されるのですが、もし生き長らえていたら、ことあるごとにこの歌を思い出しては、アンドレの自分に対する汲めども尽きぬ深い愛情を痛いほど感じていたかもしれません。

 
          (注:このエッセイは、2006年に中学3年生に向けて書かれたものです。)


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