「ベルサイユのばら」で学ぶ美しい日本語
8.12月
アンドレ……
血にはやり
武力にたけることだけが
男らしさではない
だれかがいっていた
心やさしくあたたかい男性こそが
真にたよるにたる男性なのだということに気づくとき……
たいていの女はもうすでに年老いてしまっている……と…
よかった……
すぐそばにいて
わたしをささえてくれるやさしいまなざしに
気づくのがおそすぎなくて……
《解説》
上のせりふは、「おれには男としておまえを守ってやるだけの武力すらない。」と嘆くアンドレにオスカルさまが言ったものです。
血に「はやる」は「逸る」あるいは「早る」と書きます。「勇み立つ」という意味です。また、武力に「たける」は「長ける」と書きます。武力に長じる、優れるという意味ですね。アンドレはおとなしくて控え目で、血に逸るような人ではありませんでした。剣の腕もオスカルさまより劣っていました。けれど、そんなことはオスカルさまにとって何の問題でもありませんでした。
「たよるにたる」とは「頼るに足る」つまり「頼ることができる」という意味です。心優しく温かい男性こそが真に男らしく頼れる男性なのだとオスカルさまは言っているのです。
これは女らしさにも当てはまると私は思います。たとえ、男勝りで言葉づかいも乱暴、それでも心優しく温かったら、それは真に女らしい人なのではないでしょうか。
アンドレが片想いに苦しんでいた頃、オスカルさまの女らしさを云々する衛兵隊員たちに「てめえらにオスカルの女らしさがわかってたまるか!」と怒鳴りつけるシーンがあるのですが、アンドレもきっと心優しく温かいところにオスカルさまの女らしさを見ていたのでしょう。
けれど、そういう大切なことに、私たちは往々にして気付かないものです。大切なことに気付いたときは、もうすでに年老いてしまっていた、そんなことにならないように、気を付けていきたいなと思います。
(注:このエッセイは、2005年に中学3年生に向けて書かれたものです。)
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