「ベルサイユのばら」で学ぶ美しい日本語
5. 9月
オスカル……
いつのころからだろう……
このけむるようなブロンドの髪が
鼻さきをかすめてゆれるたびに……
その夜の色をした絹糸のようなまつ毛にふちどられた
冬のオリオンをうかべるひとみにであうたびに……
凛としてとざされた唇から
おまえの生きたかぐわしい吐息のもれるたびに……
おれの体のずっとおくのほうから
なにか熱っぽいものがこみあげてきて
おれの気持ちをおちつかせてくれなくなったのは……
《解説》
上のせりふは、アンドレがオスカルさまに愛の告白をしたときのものです。
アンドレは、8才のとき母親を亡くし、たった一人の身寄りだった祖母に引き取られて、祖母の働くジャルジェ家にやってきます。このジャルジェ家には、アンドレより一つ年下のオスカルさまがいました。アンドレは、このオスカルさまの遊び相手兼護衛となります。二人は、身分の違いを越え、友情以上のものを育んでいきます。
やがて、思春期を迎えたアンドレは、オスカルさまを異性として密かに愛し始めます。ところが、オスカルさまのほうは、そんなアンドレの気持ちに気づかぬまま、別の男性に片想い。けれどもその男性は王妃マリー・アントワネットとの道ならぬ恋に苦しんでいたのでした。
そんなオスカルさまの初恋を辛い思いで見守るアンドレでしたが、ついに耐え切れなくなり、オスカルさまに自分の想いを乱暴な形でぶつけてしまいます。
それにしてもまあ、よくこれだけ麗しい修飾語の数々を並べ立てたものと感心してしまうのは、私だけでしょうか。十何年間もオスカルさまだけを見、オスカルさまだけを想ってきたアンドレならではの、オスカルさまの形容といったところでしょうか。
男として育てられてはいても、やはりオスカルさまは女。幼いときから四六時中オスカルさまのそばにいるアンドレには、それが痛いほどわかったのでしょうね。
アンドレがどんなときにすぐそばにいるオスカルさまに異性としてドキッとしたかが目に浮かぶようです。
(注:このエッセイは、2005年に中学3年生に向けて書かれたものです。)
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